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コンプレッション・ストレッチングとは

 ストレッチングを行う時にストレッチングしたい筋に弾力のある板状のゴム(=セラバンド)を巻き、その部分を圧迫して行うストレッチング法です。 皮膚、腱、筋を圧迫することにより、ストレッチング時の引っ張られ感が減少しより強いストレッチを安全に行える方法で、即効的に筋緊張が緩むのがわかります。

 セラバンドを使用する以前は弾力包帯を用いていましたが、圧迫力が弱く、均等に圧迫しにくいなどの問題があり、なかなか効果が上がりませんでした。 セラバンドは圧迫力が強く、均等に圧迫力が加わるので、コンプレッション・ストレッチングに適しています。

ストレッチングがより強く楽に行え、効果が持続

 セラバンドをストレッチしたい筋に巻きつけ圧迫を加えながらストレッチングを行うと、巻きつけずに行う方法に比べて、ストレッチ中の引っ張られ感や痛みが軽くなり、より強いストレッチングを行うことが出来ます。 巻いておくだけでも筋緊張がゆるむ効果が見られますが、ストレッチを行うと効果が強くなり、短時間で現れ、効果の持続時間も長くなります。

 例えば下腿三頭筋(ふくらはぎ)のストレッチでは巻かないで行った時よりも、ふくらはぎの引っ張られ感は軽くなり、足関節の背屈の角度がより大きくストレッチングを行えます。 つまり体をより前に倒すことが可能になります。

 また、片側にセラバンドを巻き、ストレッチングを行って左右を比較してみると、ストレッチ中の引っ張られ感やストレッチング後の効果の差が確実にわかります。

セラバンドの巻き方

図1
図1

 コンプレッション・ストレッチングの効果を出すためにはストレッチする筋、腱及びその周囲の皮膚の全てに圧迫刺激が加わるように巻かなければなりません。 つまりストレッチしたい筋に続いている腱やその部分の皮膚を包み込み圧迫するように、セラバンドを巻く必要があります(図1)。

 セラバンドをストレッチしたい筋の付着部を越えて、末梢(手先側・足先側)から巻き始めます。巻き始めはセラバンドの端を出して巻くと楽に巻けます。

 筋全体を包み、他方の付着部を越えて中枢まで巻きます。間が空かないように、少し強めに圧迫を加えて巻くのがこつです。

 最後の1周はゆるく巻き挟み込んで止めます。

図2
図2

 はずす時の為に端を少し出しておきます(図2)。

 肌に直接巻くと皮膚を傷める心配がありますので、薄い着衣の上に巻く方が良いでしょう。
血圧の上昇などの危険を避けるため、左右同時に行わずに片方ずつ行ってください。

セラバンドの巻き方の注意

 始めは弱めに巻いて試してみてください。慣れてきたら徐々に強めにしてみましょう。しびれや痛みが出るようなら直ちに中止して下さい。また巻いている時間は短時間にし、2〜3分以内にとどめましょう。
 セラバンドの強度は色で分けられています。上肢には黄、赤、下肢には青、緑を使いますが、個人差がありますので、最初は強度の弱いセラバンドで試し、自分にあった強度のものを使うようにして下さい。
 長さは2mのものを使いますが、使用する場所(大腿部)や体格などで3mほどの長さが必要な場合もあります。セラバンドの端を強く引っ張ると破れるおそれがありますので注意が必要です。

均等の圧迫が大切

 コンプレッション・ストレッチングの効果を出すには均等な圧迫力でセラバンドを巻くことが大切です。皮膚や筋肉への均等な圧迫力が筋肉の緊張を緩める反射を起こします。

圧迫の強さは心地良く感ずる強さで

 圧迫力は強いと効果が出ないばかりか、痛みを生ずる危険があります。心地よく感ずる強さを基本とします。かえって弱いくらいの圧迫力のほうが効果が出る場合があります。

コンプレッション・ストレッチングの作用はなぜ起こるのか

 筋緊張の興奮刺激に対して筋及び腱への圧迫刺激が抑制的に働くのだろうと推測しています。腱では腱紡錘に興奮性の、筋では筋紡錘に抑制性の刺激となるのかもしれません。 皮膚への圧迫刺激が痛覚の抑制に働く作用も加わるのだろうと考えます。また圧反射は発汗などの作用に変化をもたらす。つまり自律神経に影響を及ぼす報告もありますから、その作用も考えられます。 皮下結合組織への刺激も関与している可能性もあります。でも仮説の域を出ていませんが。

具体的な例

下腿三頭筋のコンプレッション・ストレッチング

図3
図3

 下腿三頭筋のコンプレッション・ストレッチングではセラバンドを足部の中央から大腿部中央まで巻きます。 これは下腿三頭筋が膝上からふくはらはぎ、アキレス腱を経て踵の骨につながっているから、その全てを圧迫するためです(図3)。

 ストレッチングは一般的な方法で行います。つまり呼吸を止めずに、心地よい引っ張られ感を感じながら30秒間ストレッチングをします。同じ場所を2〜3回繰り返して行います。

図4
図4

 私がお勧めする方法はつま先に本をかって上げ踵に体重をかけストレッチする方法です。膝を伸ばせばふくらはぎの上部に効き、膝を曲げるとふくらはぎの下部に効きます(図4)。

大腿部のコンプレッション・ストレッチング

図5
図5

 大腿の後の筋(ハムストリング)、前側の筋(大腿四頭筋)、内側の筋(内転筋群)をコンプレッション・ストレッチする時は、すねの中央から巻き始め膝、大腿を巻き、ももの付け根(そけい部)まで巻き上げます。 大腿の筋は腱となって膝下まで達しているものがありますので、膝下まで包むためにすねの中央から巻き始めます(図5)。

 ストレッチングの方法は一般的なやり方でけっこうですが、体の硬い方のハムストリングのストレッチングはこちらを参考にして下さい。 また、体の硬い方の大腿四頭筋のストレッチングはこちらを参考にして下さい。

前腕のコンプレッション・ストレッチング

図6
図6

 前腕の筋のコンプレッション・ストレッチングではセラバンドを手部の中央から上腕部中央まで巻きます。 これは前腕の筋が手から前腕、肘を経て上腕部につながっているので、その全てを圧迫するためです(図6)。

 ストレッチングは一般的な方法で行います。つまり呼吸を止めずに、心地よい引っ張られ感を感じながら30秒間ストレッチングをします。2〜3回繰り返して行います。

写真1
写真1

 私がお勧めする方法はベッドに座り手を後につきます(掌をベッドにつけます)。手先はできるだけ自分の方に向けるようにし(できる範囲で)、体を後に倒します。 これは前腕の掌側の筋のストレッチングです(写真1)。

写真2
写真2

 前腕の手の甲側のストレッチングは手の甲をベッドに着け、指先は後方から外側に向けるようにし、体を後に倒します(写真2)。

上腕二頭筋、上腕三頭筋のコンプレッション・ストレッチング

図7
図7

 上腕二頭筋、上腕三頭筋のコンプレッション・ストレッチングではセラバンドを前腕中央から脇の付け根まで巻きます。 これは上腕二頭筋が肘関節下まで来ていて、上腕三頭筋は肘頭まで来ているので、その全てを圧迫するためです(図7)。

 ストレッチングは一般的な方法で行います。つまり呼吸を止めずに、心地よい引っ張られ感を感じながら30秒間ストレッチングをします。同じ場所を2〜3回繰り返して行います。

コンプレッション・テクニック

 セラバンドを使って圧迫を加えながら行う技術をコンプレッション・テクニックと呼びます。コンプレッション・ストレッチングはそのうちのひとつです。 他に圧迫を加えながらエクササイズを行うコンプレッション・エクササイズ、圧迫を加えながら筋力トレーニングを行うコンプレッション・トレーニングなどがあります。