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からだの硬い人のためのストレッチング
2003年 9月23日 南信州新聞 掲載2005年 7月 9日 クラウチング・スタート・ストレッチング 加筆
スポーツの前後に行われるストレッチング(筋肉の伸張動作)は故障の予防、競技力向上、疲労の回復に大切です。また日常でも肩こり、腰痛の予防、治療としても効果があります。 しかしストレッチングが正しく行われていないことが多いのです。
私はからだが硬〜いのです。前屈しても指先が床につかないし、あしを投げ出して座る(長座)と背中が曲がる、ヤンキー座り(うんちんぐスタイル)ではかかとが上がってしまう。 そんな私だから気がついたことがあります。テレビでやっていたり、本などに書いてあるストレッチングの方法は相当に柔らかい人が対象であって、私のような硬い人間にはそれなりの別の方法がなければならないと。 テレビや本でのストレッチングのモデルはからだのとても柔らかい人達ばかりで(当たり前だけれど、当たり前か?)、その人達が簡単にやっている動作は私のようなからだの硬い者にはとても出来ない動作なのです。 モデルの人がやっている姿勢をとろうとすると、ストレッチしようとする筋肉が硬いために、その姿勢が取れず目的の筋肉に効かせることが出来ないばかりでなく、他の部分が無理な力がかかり傷めることにもなってしいます。
太ももの後ろの筋肉のストレッチングを例に取ってみましょう。ももの裏側の筋肉(ハムストリングス)が硬くて伸びないと腰の前屈ができにくいのです。 股関節(股の付け根の関節)がもものうしろの筋肉に引っ張られて前に曲がらないのです。そのために腰を無理に曲げて腰を痛めてしまうことがあります(図1)。
図1 |
硬い人のもも後ろのストレッチングは膝を曲げてその筋肉を少し緩めて行ったほうが良いでしょう。 立位なら両膝を曲げ前屈して手のひらを床につけそれから膝をゆっくりとももの後ろの筋肉が気持ちよく伸びる程度まで伸ばします。 引っ張られるここちよさを感じながら、そのままの姿勢で筋肉がほぐれるのを待ちます。20秒以上といわれていますがここちよい引っ張られ感が薄くなる程度を目安にすると良いでしょう。 反動をつけないで、呼吸は楽にゆっくり、頑張らないようにしましょう。痛みや違和感がからだのどこかにあったら、すぐ中止します(図2)。
図2 |
まず短距離の「位置について」の姿勢をとり、「用意」の姿勢でストレッチします(図3-1)。 足を前後に開くことで前に出した足の筋だけをストレッチすることができ、図2の方法よりも安全にストレッチングできます。 ベッドや椅子などに手をついて行えば、よりからだに負担を掛けずに行えます。この場合は手をベッドや椅子の座面に着いて、頭を座面に近づけるか、着けて行います(図3-2)。
図3-1 | 図3-2 |
片足ずつ行う方法を示しましょう。台に乗せた方のもも後ろのストレッチングです。片方のあしを台の上にのせ膝を曲げた状態にします。腰を曲げないように体を前に倒しももにおなかを近づけます。 足の位置をずらさずにお尻を後方に引いて膝を伸ばしてゆきます。 ももの後ろにここちよい引っ張られ感が出たら、そのままの姿勢で筋肉がほぐれるのを待ちます。腰に無理な力がかかることないようにやってください(図4)。
図4 |
ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)のストレッチングでは腰をそらせて傷めないように注意しなければなりませ。座布団を2枚ほど重ねた上に座ってのストレッチングをお勧めします。 伸ばす側の膝を曲げ片方の足だけ正座の形を取って、座布団からはずします。 反対側は立ち膝にします。腰をそらさないようにゆっくり後ろに倒れていき、ももの前側にここちよい引っ張られ感が出たら、そのままの姿勢で筋肉がほぐれるのを待ちます(図5)。
図5 |
最近ダンスの先生が腰臀部の痛みでみえました。診てみると中殿筋が硬いのです。もちろんダンスの先生だから硬いといってもレベルが違うのですが。大変柔らかいのですが左右比べると大きく違うのです。 ご本人も硬いと思っていませんでした。 体の柔らかい人では硬い筋肉があっても、上手くごまかせてしまうので注意が必要でしょう。
体の硬い人のストレッチングでは、ストレッチ(伸張)させなければならないところが伸張されずに、伸張してはいけないところを伸張してしまうトリック動作が起こります。 ことにももなどの長い筋肉は二関節筋(二つの関節を超えていく筋)なので、その傾向が強いのです。 だから伸張させたい筋肉を始めは緩めておき、伸ばしてはいけないところをロックしてから、徐々に目的の筋肉を伸ばすようにしなければなりません。 ストレッチングの本などに書いてある方法をそのまま取り入れるのではなく、自分に合った方法に変えて行うべきでしょう。 その時に大切なことは伸ばしたい筋肉にだけに、ここちよいストレッチ感がなければなりません。きつかったり、そのほかの部分に力がかかったりしたら間違った方法なのですから。 また理想の柔軟性を求めないことも大切でしょう。今よりチョッピリ柔らかくなる、少し体が軽くなる、そんな程度で充分だと考えましょう。理想を追い求めると体を壊すことになりかねませんから。 少しずつやっていると効果は出てくるものです。 私(50歳代ですが)は最近になって前屈で指先が床に着くようになり、うれしくなってこんな文を書いてしまったのです。