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「ぎっくり腰」安静にすると治りが悪いって知っていますか!
2011年10月4日付「南信州新聞」掲載
2011年12月 Web掲載
アメリカ、ヨーロッパで出された「腰痛のガイドライン」では今までの腰痛の常識が医学的、科学的根拠が無い、疑わしいとされました。
例えば、急性腰痛(いわゆるぎっくり腰など)は安静が大切と思われていたのが、安静は害がある、動ける範囲で動くほうが早く治り、慢性化しにくいとしています。
また、健常者の検査所見で20〜39歳で椎間板ヘルニアが20%弱、椎間板膨隆が50%以上に認められるのです。椎間板ヘルニア、椎間板変性、脊椎の変形などだが腰痛に直結するといの証拠はないのです。
そして驚くことに腰痛の90%は原因が不明な「非特異性腰痛」なのです。
腰痛の最近の考え方は構造的な問題を探して診断名をつけるのではなく、腰痛を2つに分類して考えるようになってきています。
1つ目はレッドフラッグ(危険信号)です。ごくまれに、癌の転移や外傷による脊椎の損傷、膀胱直腸障害などの危険な腰痛があるので除外診断します。それ以外は安全な腰痛、自然に治る腰痛(グリーンライト)です。
でもなかなか治らない腰痛があります。その原因が科学的な研究で社会心理的因子(イエローフラッグ)によるものだと判りました。
つまり構造的な問題よりも心理的なもの(例えば不安や抑うつ)など、社会的なもの(例えば仕事のことや家庭の問題など)の方が治りを妨げているというのです。
そのイエローフラッグの中で最強のものが「腰は弱いもの」という刷り込みなのです。これらのイエローフラッグを無くしていく事が腰痛を克服するために重要なのです。
ニュージーランドではマスコミを使って「腰痛に屈することなくプラス思考で腰痛を持ちながらも活動的な生活や仕事を続ける方が腰痛は克服できる」という腰痛撲滅キャンペーンを行っただけで腰痛患者が激減したそうです。 また腰痛の克服のために正しい知識を学ぶ「読書療法」も推奨されています。科学的根拠のある腰痛のガイドラインを学ぶことで腰痛にまつわる種々の呪縛(イエローフラッグ)から解きはなれて健康を取り戻しましょう。 正しい腰痛の知識を身につけるだけで腰痛は無くなるのです。
『腰痛ガイドブックー根拠に基づく治療戦略―』長谷川淳史著 春秋社
『腰痛のナゼとナゾ』菊池臣一著 メディカルトリビューン