ここ10年ほどで腰痛に対する考え方が劇的に変化しています。今までの常識の多くが誤りだと判ってきました。腰痛がなかなか治らないのはその常識のウソにはまっているからとの指摘があります。 例えばぎっくり腰の時に安静にしてはいけないと知っていましたか。安静はぎっくり腰の回復を遅らせ、慢性化させる危険があります。 もちろん無理して動けということではありませが、動ける範囲で早く日常生活に復帰するのが早く治すこコツなのです。
レントゲン検査、CT、MRIなど種種の検査をしても原因がわかるのは10パーセント程度なのです。それ以外は原因不明なので「非特異性腰痛」と呼んでいます。
特異的なものが無い腰痛というのです。なにか判ったような判らない話ですがこれが事実なのです。
椎間板ヘルニアがあると指摘されても落ち込むことはありません。
健常者の画像診断のデータで20〜39歳で椎間板ヘルニアがある人が20パーセント、40〜59歳では20数パーセント、60〜80歳では30パーセント以上だといいます。
椎間板ヘルニアが画像に写っていてもそれが必ずしも腰痛の原因ではないし、ヘルニアがあっても腰痛は治るのです。
「運動器疾患である腰痛を内科的疾患である風邪のように考えてみたら」と世界腰痛学会の元会長で福島県立医大の学長、整形外科医の菊池臣一先生はおっしゃいます。
風邪をひいてもほとんどの人は寝込むこともなく、咳や鼻水程度で済みます。ごく稀に高熱で寝込むことはありますが、風邪が悪化して肺がんや肺結核にはなりません。
また風邪を繰り返しても重症化するなんてこともありません。腰痛もこのように考えようということです。
腰痛は構造的な問題よりも心理的なもの(例えば不安や抑うつ)など、社会的なもの(例えば仕事のことや家庭の問題など)の方が治りを妨げているというのです。
ニュージーランドではマスコミを使って「腰痛に屈することなくプラス思考で腰痛を持ちながらも活動的な生活や仕事を続ける方が腰痛は克服できる」という腰痛撲滅キャンペーンを行っただけで腰痛患者が激減したそうです。
また腰痛の克服のために正しい知識を学ぶ「読書療法」も推奨されています。科学的根拠のある腰痛のガイドラインを学ぶことで腰痛にまつわる種々の呪縛(イエローフラッグ)から解きはなれて健康を取り戻しましょう。
正しい腰痛の知識を身につけるだけで腰痛は無くなるのです。
『腰痛ガイドブックー根拠に基づく治療戦略―』長谷川淳史著 春秋社
『腰痛のナゼとナゾ』菊池臣一著 メディカルトリビューン